Megadeth / United Abominations

United Abominations

United Abominations

ラストアルバムとも噂された「The System has failed」から約2年、Megadethの新譜「United Aboninations」が5/15にリリースされた。
前作は、Megadethというよりデイブ・ムステインのソロ作だなどと評価されたけど、個人的にはかなりお気に入りのアルバムで、キャリアを重ねるごとに輝きを失うメタルバンドが多い中、Megadethの復活を嬉しく思ったものだ。そして今回、引退を撤回してまでリリースした今作はどうかというと、これが素晴らしく出来が良い。前作も良かったけど、明らかにそれ以上である。これで晴れて完全復活と言えるだろう。
アマゾンのレビューを見ると意外に評価は割れているようだけど、いわゆるスラッシュメタルのスピード感、破壊力がないとしても、そういった事が瑣末時に思えるほどの楽曲クオリティ、演奏力の高さが今回のアルバムにはある。
楽曲の雰囲気は「Countdown to Extinction」や「Youthanasia」あたりが近いと思う。その「Youthanasia」から、名曲「A Tout le Monde」がセルフカバーされている。女性コーラスがフューチャーされハイテンポになったものの曲自体の雰囲気はあまり変わりなく、それでいて新しい曲の間でもほとんど違和感を感じない。
原曲と聞き比べて感じたのは、ムステインのボーカルがかなり上手になっている(というか気合いが入っている)ということ。10年以上前の曲だから当時より上手になっていても全然不思議でないが、ただキャリアを積み重ねただけでなく、メンバーとの軋轢、アルバムセールスの不振など紆余曲折を経た今だからこそ心からバンドに打ち込めている、そんなムステインの心意気が伝わってくるようなボーカルじゃないだろか、なんてことを思った。
冷徹なインテリ・スラッシュバンドのボーカルという印象とは裏腹に、Metallica「真実の瞬間(原題:Some Kind of Monster)」で涙ながらにMetallica脱退後の悔恨と苦悩を語ったり、前作リリース後のフェアウェルツアーでファンの熱い反応を前に引退撤回を決意したり、デイブ・ムステインという人は意外なほど人情派なのかもしれない。
今回加入したグレン・ドローヴァーのギター・ソロも個人的にかなり好きな部類のフレーズ満載だった。正確かつスピーディーなピッキングが奏でるメランコリック高速ソロは、久々に「ギターが弾きてぇ!!」と思わせる熱い何かがある。