桐野夏生、絲山秋子

最近、また小説を読み始めた。買い溜めしてあった桐野夏生の「玉瀾」を読んで、かなりツボに入ってしまったのをきっかけに、通勤電車の中で小説を読む癖がついてしまった。以下、最近読んだor買った本

現代、そして戦前の上海を舞台に、4人の登場人物、それぞれの視点から語られる物語。ジャンル的には恋愛小説なんだろうけど、かぎ括弧を多用せず、延々と心理描写が続く桐野小説独特の雰囲気から、恋愛小説というより人間ドラマとしての印象が強い。
桐野夏生の作品には、どちらかと言うと「救いの無い現実」といったものを突きつけられる終わり方の小説が多いのだけど、玉瀾の終わり方には、人生の希望や人に対する期待のようなものを感じた。

玉蘭 (文春文庫)

玉蘭 (文春文庫)

玉瀾が思ったよりツボだったので、その勢いで買う予定のなかった短編集「アンボス・ムンドス」を購入。まだ表題作まで読めていないけれど、桐野節全開といった雰囲気のダークな短編が収録されています。決して面白くないわけじゃないが、やっぱりこの人の小説は長編でこそ…、って思う。「ダーク」以降、ミロシリーズは止まっているけど、ぼちぼち新作を出して欲しいものです。

アンボス・ムンドス

アンボス・ムンドス

芥川賞にノミネートされた頃から気になっていた絲山秋子の短編集をタイトルに惹かれて衝動買い。タイトルに惹かれてと言っても、とくにニート問題に興味があるわけじゃなく、なぜ、今いま、あえて「ニート」なんだろう?という興味から手に取ったという感じ。
肝心の表題作は、意外にあっさり終わってしまうのだけれど、実は、この作品には「2+1」という後編にあたる作品があって、この2辺を通して読むと、なかなかに印象深い作品だった。
決してニート問題を提起するわけでも世の中の批判をするわけでもなく、主人公とニートであるその友人の日常を描きながら淡々と物語は進んでいく。あくまで私小説的で日常生活を切り取ったかのような作風から、ニートなんてがやがや騒ぐほど特別なことじゃない、という思いが込められているように思うのは考えすぎだろうか。
ちなみに、この作品のカバーデザインは鈴木成一氏。俺が気に入る本は、なぜかこの人のデザインによるカバーが多い。単に仕事の依頼が多いからなのか、それとも、鈴木成一を気に入る作家に俺の好きな作家が多いのか。デザイン自体も、かなり俺の趣味(というか尊敬してます)なので、機会があれば小説のジャケ買いをして当りが出るか試してみようと思う。

ニート

ニート