The Black Crowesの新作が想像以上に良い

Before the Frost...

Before the Frost...

公式サイトで無料配布されていたシングル「I Ain't Hiding」を聞いて早速予約したThe Black Crowesの「Before The Frost...」がシングルで予感していた出来の良さを越えて、かなりの名作だった。

「I Ain't Hiding」を聞いたときは、少しばかり昨今のロックシーンへの「歩み寄り」みたいなものを感じたけど、アルバムを通して聞いてみたら、ものすごい我が道を行くっぷりに、ちょっと驚いた。簡単に表現してしまえば、とても「渋い」。たぶん、常日頃ブルースロック寄りの音楽を聞く機会のない人には、このアルバムはただのカントリーにしか聞こえないんじゃないかと思う。

日本でのThe Black Crowesの認識といえば、Guns N' Rosesが大流行りしていた頃に出てきたブルースちっくなちょい渋ロックバンドという程度のものだと思われ、悪く言ってしまえば、ガンズやエアロスミスの流行に乗って出てきた新人バンドみたいな、そんな感じなのではと思う。

デビューアルバムの「Shake Your Money Maker(1990年)」から3rdアルバムの「Amorica(1994年)」くらいまでは、けっこう話題になってしたしセールスもそこそこあったのではと思うけど、個人的に好きだった4thアルバム「Three Snakes And One Charm(1996年)」あたりから勢いが失われ、あまりセールスのふるわなかったことへの反省からか、その次に出した「 By Your Side」(1999年)でがらりと雰囲気が変わってしまったように感じられ、「これは、もう聴かなくてもいいかな」と思っていた。

なので、実は、2002年に活動停止していたことも知らず、2008年発表の「Warpaint」も未聴だったけど、まさか、一度シーンから離れてしまったバンドが、ここまで往事の勢いを復活できているとは思ってもいなかった。

ひとたび勢いを失ったバンドが、またシーンに戻ってくるのは、とてつもなく大変なことだと思う。それは、ボクシングで一度チャンピオンの座を失うと、まず復活できないと言われているのと同じことなんだと思う。

たいていの場合、一度失敗し再チャレンジするなら、次は別の方法で、と思うのが一般的なのだろうけど、「Before The Frost...」を聞いた印象では、ブラック・クロウズは、バンドの過去の方向性と決別するどころか、失敗したかに思えたやり方を更に押し進め純化させることで復活を果たしたように自分は感じた。

今の日本で過去のような認知度を持つことはおそらくないだろうけど、本国アメリカでは、エアロスミスが「Permanent Vacation(1987年)」で劇的な復活を成し遂げたように、The Black Crowesもまた、このアルバムを出したことによって、ロックバンドとして不動の地位を築きはじめることになると思う。

ちなみに、このアルバム、購入時は1枚組のCDだけど、CDに着いているIDを下記サイトで入力するともう一枚のアルバム「...Until The Freeze」をダウンロードできる。つまりは、実質2枚組ということ。「...Until The Freeze」に収録の「Greenhorn」は、名曲「She Talks To Angels」に並ぶ名バラードなので、アルバム購入した人は忘れずダウンロードしませう。